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雨上がりの夜空に

山谷の話が出たついでと言ってはなんだけど、山谷のご近所の吉原での思い出話。
吉原も山谷と同じく現在は地名としては残ってない。
男なら一度は憧れる色街である。
まぁ簡単に言うとソープ街っすね。
江戸時代から続く遊女の街は欲望の渦巻く悲しい歴史のある街かもしれません。

俺が社会人になりたての頃の話。
かれこれ20年以上も前になるんだねぇ(遠い目)

ちょっと話が長いのと、アレな内容もあるのでそういうのが好きじゃない人には読むのお勧めしません。
「森野さんってそういう人だったんだぁ!不潔っ!大ッキライ!」ってな純なお嬢さんは絶対読まないでね(笑)


社会人になると、少ないながらも給料が出る。
バイトとは違い毎日働いてるわけだから、多少の食費と卒業旅行の借金を親に返してもそれなりに自由になる金は手元に残る。
で、ソープに行ってみようということになった。
今だったらヘルスだのイメクラだのと選択肢も多いのだが、当時はソープかピンクサロン(ピンサロ)くらいしかなかった。
ピンサロのが当然リーズナブルなのだが、実は何をするところなのか良くわからなかった(汗)
まぁさすがにソープは何をするところは知ってたんだよね。

ソープといえばまず思いつくのが吉原である。
あとは川崎が有名なのだが、川崎はすごく遠い気がして吉原に行くことになった。

悪友と二人で仕事帰りに待ち合わせた。
確か週末だったような記憶がある。
ずいぶん前から計画して当日は朝からソワソワして仕事も手に付かない有り様だったようにも思う。

さて、ここで問題が持ち上がる。
吉原ってどこだ?
地図を見ても載ってない。
いわゆる通称なので当たり前なのだがこれには困った。
なぜかわからないのだがとにかく浅草の近くだと思い込んでた。

朝から降っていた雨も夕方には上がりなんとなく幸先が良い気がした。
悪友の会社の近所で待ちあわせていざ銀座線で浅草へ!
期待に胸を膨らませた社会人一年生達は地下鉄の中で妙に無口だったりして。

浅草について、とにかくタクシーで行こうということになる。
まぁそれしかたどり着く手段が思いつかなかった。
「どちらまで?」
「・・・・」
シャイな社会人一年生は、その目的が一発でわかる地名を言い出せない。
「どちらまで?」
運転手の口調にいらだちが混ざる。
「・・・よ、吉原まで」
「吉原のどちらまで?」
「へ?」
そんなに広いのか?どちらって言われたってわかんないよー!
「あの・・いちばん一般的なところで」
「じゃあ大門のとこでいいすか?」
「・・そこでお願いします」
運転手もさすがに俺達の状況を悟ったらしく妙に親切になっていろいろと教えてくれた。
最近は景気が悪いこと。
ほんとは上野からのが近いこと。
ポン引きには気をつけろとか。
そうこうしてるうちに何やら門の前に着いた。
さぁいよいよ突撃である!

タクシーを降りて、怪しいネオンのついた、雨上がりの夜の闇にそこだけ明るく浮かび上がった目抜き通りの入り口に立ち、俺達は大きく息を吐いた。
あまりの店の多さに途方に暮れていると声をかけられた。
「お兄ちゃん達、店は決まってるのかい?」
来た来た来たーっ!いきなりポン引きさん登場ですよ。
早すぎるって。
まだ心の準備ができてないっす!
見るとよれよれのスーツにゴム長を履いたむさくるしいお兄ちゃんが寄ってくる。
シャイな社会人一年生は逃げるでもなく無視するわけでもなくじりじりと間合いを詰められ、まんまと射程距離に入ってしまう。

「吉原は初めてかい?」
「・・はぁ。そうなんですよ」
友達に目で合図を出す。
どうするよ?ヤバくない?タクシーの運ちゃんも言ってたし、ポン引きだけはNGって週刊誌にも書いてあったじゃん。
「初めてなら案内してやるよ。タダでいいからさ。」
「はぁ」
「おまえらだけで歩いてっとすぐポン引きのえじきだぞ」
おまえだってそうじゃんか!
「俺はここ結構長いからさ、初めての人にはいい思いしてもらってまた来てもらいたいわけよ。案内するだけでいいからさ付いてきなよ」
うーむ、確かに一理ある。
それに俺達だけじゃ確かにどこに行っていいやら見当もつかない。
少し東北訛りの残る兄ちゃんはむさくるしいが悪い男には見えなかった。
小声で同僚と相談する。
「頼んじゃう?」
「そ、そうだな。いざとなれば逃げればいいか。そん時は走るぞ!」
「OK」

兄ちゃんのあとについてまるで田舎から出てきた観光客よろしく店の説明を聞いた。
目抜き通りの両側に、中世の宮殿風やメタリックなモダンなデザインなど思い思いの趣向を凝らした店が建ち並び、タキシードを着たボーイが入り口に立って声をかける。
兄ちゃんがいるからさすがに露骨に寄ってこない。
「店の前から出ちゃいけないって取り決めなんだよ」
「はぁ、そうなんですか」
「だから通りの真ん中まで出てくるのは店とは関係ない奴の場合が多い」
「どういうことです?」
「その店目当ての客をインターセプトして、自分が契約してるとこに放り込むんだよ。で、キックバックをもらう。そういう店はろくなもんじゃない」
なるほど。
で、あなたはどうなのよ?という疑問を抱きつつも目抜き通りから裏通りへとはいる。

表通りと違い店の作りは多少質素な感じになる。
ネオンも少し暗い。
店の前にボーイが立っているところも少ない。
兄ちゃんの説明によると値段も多少安いらしい。
当時のソープの相場はいわゆる90分でワン・ツーと呼ばれる入浴料1万、サービス料2万の合計3万だった。
バブルの頃から総額5万だの10万の高級店なるものが出来たんだが、当時はそんな高級店は目抜き通りの数軒くらいしかなく、兄ちゃんに「ここは豪華だけど高いよ、5万だね」「ふえぇっー」てなもんだった。
裏通りには1万5千円とかいう店もあったが、店の作りもそれなりで、出てくるおねーさんもそれなりらしかった。
30分近くもお上りさん状態で歩き回りそろそろ疲れてきた頃に兄ちゃんは立ち止まるとまじめな顔をして振り返った。
「吉原はだいたいこんなところだ。で、俺も商売だからここで一つ俺の話も聞いて欲しいいんだが、いいかな?」
さんざん案内してもらったし、ここでバックれるのは正直気が引けた。
見ると悪友も同じ気持ちらしい。
「知ってる店があるんだけど、紹介だけでいいから来てくれない?気に入らなかったらもちろん断ってくれていいから」
一瞬躊躇はするものの優柔不断な社会人一年生はなすがまま。
ちょっとまな板の上のコイの気分でもある。
「はぁ、いいすよ」

兄ちゃんはここで待ってろと言うと小走りに近くの奥まった店に行き、店先のボーイと何やら話しだした。
何となく不安が胸をよぎる。
「逃げるなら今だな」
「おおっ!でもさ、なんかあの兄ちゃんいい人っぽくない?」
「そうなんだよなぁ。任せてみるか。他にわかんないしなぁ」
と話してると兄ちゃんは戻ってきた。
「あそこの店なんだけど、場所が悪くて俺みたいなの使ってるんだけどさ、いい店だから。今ならこの娘達つけるって」
手に持ったポラロイド写真を見せる。
恐る恐るのぞき込む。
か、かわいい!
二人ともアイドルのような若くてかわいい子だった。
「うそぉー!こんな子いるはずないじゃん」
思わず口走ってしまった。それくらいかわいいと思った。
「うそじゃないって。俺がうそつくと思うか?」
お、思わないけど・・・。で、でもなぁ・・・。
今でこそびっくりするようなかわいい娘が風俗で働いてたりしても、それほど不思議じゃないんだが、当時としてはそれ相応にアレな人たちが従事しているという固定観念もあった。
きっと写真は別人か何かで実際は掃除のおばちゃんみたいのが出てくるに決まってる!絶対そうだ。そうだもの!
気がつくと店のボーイが近づいてきてた。
「ちょうど今キャンセルが入って、今ならすぐ入れますよ。その娘達うちのナンバー1・2だから、電話で予約とか入っちゃったらダメだけど。どうします?」
話がうますぎる。しかもうまく気持ちを煽りやがる。だまされちゃいけない。

「どうする?」
「・・・いいんじゃないかなぁ?」
悪友も迷いつつも写真の威力にほぼ気持ちは固まってるようだ。
聞けば80分2万5千円。
高いのか安いのか判断に迷う微妙なシステムだ。
「どうします?」
ボーイは俺達の気持ちを見透かしたようにとどめを刺しにかかる。
「じ、じゃぁ、おねがいしよっかな??」
兄ちゃんはちょっとホッとしたように人懐っこい笑顔になると俺達を店まで見送った。
歩きながら「また来てよ。いつでも案内するから。俺が知ってる中でもいい店だから安心しろ。」
「どうもいろいろありがとうございました」
「おうっ!楽しんでな」

通常店の受付で入浴料、中でサービスが終わったあとに女の子にサービス料を払うところを、今日は特別だから先に全額払ってくれとのこと。
キャンセルでスタンバイできてるからすぐ案内できるので待合室でちょっと待っててくれと言われ、番号札を渡されて応接セットのある8帖くらいの部屋に通される。
先客が何人かテレビを見ていた。
すぐにボーイが冷たいお茶を運んでくる。
俺達は緊張した面持ちで居心地悪そうに座っているとすぐに俺達の番号が呼ばれた。
「おまえ先行けよ」
「おまえ行けよ」
運命の分かれ道でもある。
どちらが先に行くかで天国と地獄に別れる場合もあるからだ。
結局手にした番号に従うことになり俺は後から入る事になった。
不安そうな面持ちでボーイに案内されて部屋を出て行く友達の後ろ姿を見送ると、彼の無事と自分の幸運を祈らずにはいれなかった。
奴が出て行ってからまもなく俺の番号が呼ばれた。
今までの話のつじつまが合っていることに少しホッとしながらも、俺の緊張はピークに達していた。

ボーイに案内されて部屋を出るとカーテンで仕切られた入り口を入り廊下でご対面である。
「ユミさんです」
ドキドキしてまともに見れない。
ボーイの影になってお辞儀をしていた小柄なピンクのミニの制服を着た女の子が顔を上げる。
か、かわいい!
写真通りだった♪
どっちかって言えばこっちの娘がいいなと思ってたほうの娘だった。
デビューしたての松田聖子をちょっとエロくしたような感じ。
「ユミです」
「はぁ、ど、どうも」
「お部屋はこっちです。お手洗いはいいですか?」
「あっ、だ、大丈夫です」
背後からボーイの「ごゆっくりお入りなさいませ〜」なんて声に送られて、部屋へと続く階段を案内されるがままに上っていった。
途中手をつながれた。
初対面の女の子と手をつなぐことなんてなかったからかなりどぎまぎした。
・・・まぁ今でもないんだけど。
「ここは初めてですか?」
「はい。て言うかこういうとこも初めてなんです」
「えー、そうなんだぁ!じゃぁあたし責任重大だね」
がぁー、なんて良い娘なんだ!それに明るいし。
この時点ですっかり舞い上がっておりました。
「お友達と来たんでしょう?リナちゃんがついた人」
悪友のことはすっかり忘れておりました。はい。

部屋に入る。
8帖くらいの部屋の奥にバスタブとシャワーやら洗い場があり、一段高くなったところに小さいベッドが配置されている。
ドアを閉めるとドアについた小窓の前に上着をかけて目隠しする。
「窓がないとダメなんだって。決まりらしいよ。上着かけて隠すからなくてもおんなじだけどね」
どうしていいやらわからずにもじもじしてると
「そこで脱いじゃってね」
「えっ!脱ぐの?」
アホな質問である。
「脱がなきゃサービスできないよう」
ユミちゃんはくすくす笑いながらさっさと制服を脱ぎ始める。
なんのためらいも見せずに裸になると、胸は小さいがお尻と太ももに十分な質感のあるいわゆる幼児体型な肢体をあらわにする。
俺もあたふたと裸になる。
初対面の女の子の裸を見るのも初めてなら見られるのも初めてである。
一瞬俺は何やってるんだろうと訳がわからなくなる。
裸になって手持ちぶさたにしてると、湯船にお湯を入れながらこちらに小柄な割にはボリュームのあるお尻を突きだすように見せながら「そこに座って待っててね。今用意するから」とリードされる。
初対面の女の子にお尻を突きだされるのも初めてなら・・・・しつこいか。
「じゃあ洗うからこっち来て!」

まぁその後のことはあまり詳しく書いちゃうとアレなんでそれはまた別の機会にってことで。(っていつだよ?)
とにかくその日は予想以上に素敵な経験が出来た。
店を出ると悪友が上気した顔で待ってた。
しばらく無言で歩くとこらえ切れないようにニヤついて
「どうだった?」
「良かったぁ♪おまえは?」
「俺も!最高だった♪」
少し大人になった気分の社会人一年生二人はニヤニヤしながら雨上がりの町を歩いた。
ネオンの向こうの夜空に雲が流れて、夏の訪れを予感させる風が気持ち良かったのを今でも覚えている。

結局それほど金があるわけではないからしばらく吉原には行かなかったし、あの兄ちゃんにも会う事はなかった。
考えてみるとあの兄ちゃんに「いい思い」をさせてもらったおかげで吉原には良い印象を持っているし、風俗やそれに関連して働いてる人たちに対しても割とフラットな目で見られるようになった。
まぁその後風俗では手痛い思いをしたりもしてるんだけどね(笑)
そっちについても今となっては笑い話です。

当時は今よりもっと人と人とのつながりに温もりがあったような気がするなぁ。
みんなもっと暢気だったよな。世の中的に。

あの兄ちゃん。
元気にしてるかなぁ?

| ■ ふと思い出した懐かしいコト | 18:08 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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