もうかれこれ30年以上前の話です。
たしかまだ俺が中学生だった頃の話だったと思う。
その日、なぜそこにいたのかはよく覚えていないんだけど、今は無き
向ヶ丘遊園地 での出来事。
日曜日の昼下がり。
季節は秋頃だったろうか?
何かの集まりが遊園地の中の広場であって、現地解散後一人で帰宅する事になったんだと思う。
遊園地の中を出口に向かって歩いていると、やたらキレイな女性達の一団に出くわした。
その中にひときわ俺の目をひいた女の人がいた。
ピンクの半袖ニットに、白いミニのプリーツスカート。
歩くたびにスカートがひらひら揺れて、ドキドキしながら思わず後をついて行ってしまった。
顔や髪形は良く覚えてないんだけど、ちょっと小柄でかわいらしい感じの女性だったような気がする。
今にして思えばヨドバシあたりの大撮影会って奴だったんだろう。
出口に近いところに机が並べられのぼり旗が立てられ、なにやらフィルムの現像を受け付けていた。
彼女達はモデルさんだったわけだ。
三々五々集まってきたモデルさん達は控え室のようなところに入っていく。
件の女性も控え室の扉の奥に消えていった。
俺はといえば家に帰るわけだから、ここで彼女とはお別れである。
まぁ、ほんの数分間俺の前を歩いてて、スカートがひらひらする度にドキドキしてただけの間柄なんだけどね。
ところがその日はなぜかここで別れてしまうのがとても惜しかった。
それくらい彼女のタイプがストライクど真ん中だったんだろうなぁ。(今となってはスカートひらひらをぼんやり覚えてるだけなんですが・・・)
結局彼女達が着替えて出てくるまでその場で待ってしまった。
いわゆる「出待ち」って奴ですな。
うーん、厨房のクセに生意気じゃないか、俺。
モデルさんたちは大勢で、撮影会参加者も結構いたりして、見失わないようにかなり気を使ったんじゃないかな?
たぶん結構な時間待ってたように思う。
つーか、その時はそう感じた。
もう行っちゃったのかなぁ?と思って諦めかけた時に例の彼女が出現した。
友達なのか、その日たまたま一緒になったモデルさんなのか、数人で連れ立って出てきた彼女達は出口へと向かう。
その時、彼女が着替えて出てきたのがどんな服装だったかはよく覚えていない。
まぁその後ドキドキした覚えが無いからジーンズとかかな?(笑)
向ヶ丘遊園地は小田急線の駅からかなり離れた場所にあって、直通のモノレールがあるくらいだったんだけど、距離の割にはモノレールの運賃が高くて、よほどの事が無ければみんな歩いてた。
彼女達もご多分に漏れず歩いて帰ったと思う。
少し離れて気づかれないように後をつけた。
まぁ駅に向かう事はわかっていたから見失う事は無かったんだけど。
それでも刑事ドラマの尾行のような、どこか後ろめたい気分と、キレイなおねーさんを見ていたいという思春期の感情が入り混じって妙に興奮していたと思う。
ヤバイ厨房である。
小田急線に乗り、新宿まで向かう。
当時は急行で4駅。(今もそうかな?)
少しはなれた場所から談笑する彼女を気づかれないように見つめる。
当時は純粋だったから(笑)本当に見ているだけで満足だった気がする。
とにかく今までお目にかかったことが無いような美人だったんだよね。
俺は途中で降りなければならなかったんだけど、ここでお別れしたら最後、もう2度と会えないことはわかっていたから、結局自分の下車駅に着いても降りる事が出来なかった。
ほどなくして電車は終点の新宿に到着する。
さすがにこれ以上はついていけない。
そこでそのまま引き返せば電車賃は余計にかからないわけです。
当時の中学生には電車賃もバカにならなかったからね。
さようなら。
きれいなおねーさん。
もう2度と会うことは無いのでしょう。
それでも、きっと僕はあなたの事を忘れないでしょう。
何年も、何十年も。
ふとその時、どうしても彼女の声が聞きたくなった。
とっさに中学の入学祝に買ってもらったセイコーの腕時計を外すと、改札の手前で彼女に声をかける。
「あの、す、すいません。い、今何時ですか?」
立ち止まって振り向いた彼女は俺を涼しげな目で見つめる。
思った以上に細くて白い腕にはミッキーマウスが両腕で時間を知らせるタイプの腕時計がまかれていた。
文字盤が見えるようにすっと俺に身体を寄せると、鈴の音のようなかわいらしい声で時間を知らせてくれた。
ほのかにいい匂いがした。
ドキドキした。
礼を告げると、彼女はにっこりと微笑んで改札の向こうに消えていった。
当然といえば当然だけど、それ以来彼女に会うことは無い。
それでもこうして、30年以上経った今でもふと思い出す。
何があったわけではないけれど、ある意味運命的な出会いだったのかな。
今、撮影会なんかに参加しているのも因縁めいたものを感じたりします。
少年の日のちょっと甘酸っぱい思い出です。
で、今更ながら思うのは、駅のホームって時計いっぱいあったんじゃね?
バレバレじゃーん(滝汗)
▼誰にも似たような思い出ってあるんですかね?
■雪 猫